読書 砥上 裕將『線は、僕を描く』 主人公の霜介はたまたま水墨画の巨匠に出会い、才能を見込まれて弟子になり、順調に腕を上げ、よき理解者にも恵まれて……とあらすじだけ読めばなろう小説のような都合のよさだが、実際はそう感じさせない物語の奥行きがある。それは、シンプルな物語の枠に対... 2021.11.26 読書
読書 森見登美彦『夜行』 殺人鬼が出てくるようなハリウッド系のホラー、あるいは幽霊が出てくるようなジャパニーズホラーはある意味わかりやすい。超常現象であることがはっきりしているからだ。そして、対処するためにはどうすればいいか(例えば弱点など)もルールに盛り込まれてい... 2020.11.24 読書
読書 筒井 康隆『旅のラゴス』 主人公がいくつもの国を旅して行く先々で不思議な出来事に遭遇するというのは、後発ではあるが『キノの旅』に似ている。それでも本書の方が内容が濃く感じる。その理由は、『旅のラゴス』には時系列が存在し主人公が年を重ねていくことと、各都市での出来事を... 2020.02.15 読書
読書 新海誠『小説 言の葉の庭』 映画のノベライズというと、だいたいの作品は映画で十分、よくて映画の補完的な役割を持つ程度の作品ばかりという印象がある。しかし『言の葉の庭』は映画も小説もそれぞれで作品として完成しており、両方見れば相乗効果的に楽しめる作品だ。新海誠は映画はも... 2020.01.05 読書
読書 小嶋陽太郎『悲しい話は終わりにしよう』 小嶋陽太郎が描く人の抱える痛みが、踏切の遮断機の音のように急かされて押し寄せてくる。『火星の話』で見せていた片鱗が大化けした。環境に恵まれて毎日元気に暮らしている幸せな人にはこの小説はただの暗い話にしか見えないかもしれない。でも、人の悪意に... 2018.08.20 読書
読書 米澤穂信『さよなら妖精 単行本新装版』 ミステリあり、社会性あり、文学性もありで、それらが調和しているのが信じられない。2004年の作品を新装版として刊行するのも頷ける出来。元々「古典部」シリーズとして書かれていたこともあり、扱われるのは日常の謎。いくつかある小さな謎は古典部シリ... 2017.12.22 読書
読書 小嶋陽太郎『火星の話』 過不足がない。エピソードも登場人物もみんな必要で、「ここはもっとこうしたらいいのに」というのが私には思いつかなかった。見どころは2つだ。まずは主人公の「僕」とヒロインの佐伯さんの関係。佐伯さんは自称火星のお姫様で、内戦から逃れて地球に来てお... 2017.12.14 読書
読書 白河三兎『私を知らないで』 この小説に書かれているのは何か?家族か、恋愛か、青春?成長、共感、嫉妬、孤独、愛情、友情、希望、絶望?全部だ。20の章に細かく分けられた物語は、その一つ一つが起承転結の立ったエピソードで成っており、メッセージ性もある。エピソード同士は深くか... 2017.06.15 読書
読書 犬村 小六『とある飛空士への追憶(単行本)』 これがライトノベルなのか!?『とある飛空士への追憶』はライトノベルレーベルであるガガガ文庫から出版された。それが人気を博し、映画化がなされたことで、加筆修正を行って新装版が出された。新装版では、文庫にあったイラストを省き、より一般小説らしい... 2017.03.07 読書
読書 米澤穂信『いまさら翼といわれても』 久しぶりの古典部シリーズ、安定の面白さ。連作短編なので、普通ならいくつかいまいちなものが混ざっているものだが、すべてでクオリティが高い。「箱の中の欠落」『匣の中の失楽』をもじっているのかとは気付いたが、読んだことはないので内容に関係があるの... 2017.01.04 読書