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柚木麻子『本屋さんのダイアナ』

私に命令できるのは、この世界で私ひとりだけ……。私の名は、矢島大穴(ダイアナ)。変な名前も金髪もはしばみ色の瞳も大嫌いだった、あの子に出会うまでは。心ふるえる最強のガール・ミーツ・ガール小説。私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャ...
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森見登美彦『宵山万華鏡』

祭りの夜に、何かが起こる。森見ファンタジーの真骨頂!姉妹の神隠し、学生達の青春群像劇、繰り返される一日からの脱出など、祇園祭の京都を舞台に様々な事件が交錯し、全てが繋がってゆく。万華鏡のように多彩な宵山の姿を楽しめる、連作中篇集。「宵山姉妹...
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森見登美彦『きつねのはなし』

闇の中で、ケモノが笑った。美しく、怖ろしくて、愛おしい、京都奇譚集。「庭に誰かいますか」私が尋ねると、天城さんはふいに顔の皮膚が突っ張ったような表情をした。眼球が動きを止めて、深い眼窩の中で凍りついたように見えた。「庭に? 誰が? 」彼は私...
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伴名練『なめらかな世界と、その敵』

いくつもの並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春を描いた表題作のほか、脳科学を題材として伊藤計劃『ハーモニー』にトリビュートを捧げる「美亜羽へ贈る拳銃」、ソ連とアメリカの超高度人工知能がせめぎあう改変歴史ドラマ「シンギュラリティ・ソヴ...
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森見登美彦『夜行』

殺人鬼が出てくるようなハリウッド系のホラー、あるいは幽霊が出てくるようなジャパニーズホラーはある意味わかりやすい。超常現象であることがはっきりしているからだ。そして、対処するためにはどうすればいいか(例えば弱点など)もルールに盛り込まれてい...
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筒井 康隆『旅のラゴス』

主人公がいくつもの国を旅して行く先々で不思議な出来事に遭遇するというのは、後発ではあるが『キノの旅』に似ている。それでも本書の方が内容が濃く感じる。その理由は、『旅のラゴス』には時系列が存在し主人公が年を重ねていくことと、各都市での出来事を...
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新海誠『小説 言の葉の庭』

映画のノベライズというと、だいたいの作品は映画で十分、よくて映画の補完的な役割を持つ程度の作品ばかりという印象がある。しかし『言の葉の庭』は映画も小説もそれぞれで作品として完成しており、両方見れば相乗効果的に楽しめる作品だ。新海誠は映画はも...
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小嶋陽太郎『悲しい話は終わりにしよう』

小嶋陽太郎が描く人の抱える痛みが、踏切の遮断機の音のように急かされて押し寄せてくる。『火星の話』で見せていた片鱗が大化けした。環境に恵まれて毎日元気に暮らしている幸せな人にはこの小説はただの暗い話にしか見えないかもしれない。でも、人の悪意に...
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米澤穂信『さよなら妖精 単行本新装版』

ミステリあり、社会性あり、文学性もありで、それらが調和しているのが信じられない。2004年の作品を新装版として刊行するのも頷ける出来。元々「古典部」シリーズとして書かれていたこともあり、扱われるのは日常の謎。いくつかある小さな謎は古典部シリ...
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小嶋陽太郎『火星の話』

過不足がない。エピソードも登場人物もみんな必要で、「ここはもっとこうしたらいいのに」というのが私には思いつかなかった。見どころは2つだ。まずは主人公の「僕」とヒロインの佐伯さんの関係。佐伯さんは自称火星のお姫様で、内戦から逃れて地球に来てお...