森見登美彦『宵山万華鏡』

読書

祭りの夜に、何かが起こる。森見ファンタジーの真骨頂!
姉妹の神隠し、学生達の青春群像劇、繰り返される一日からの脱出など、祇園祭の京都を舞台に様々な事件が交錯し、全てが繋がってゆく。万華鏡のように多彩な宵山の姿を楽しめる、連作中篇集。

「宵山姉妹」
バレエ教室の帰りに宵山のお祭りに出かけた女の子は、人ごみの中で姉とはぐれてしまう。姉を探すうちに真っ赤な浴衣を着た女の子たちに出会い……。

「宵山金魚」
主人公藤田の友人乙川は京都に住んでいる変わった男だった。藤田は過去二回、乙川に宵山の案内を頼もうとしたが、2回ともはぐらかされてしまっていた。そこで今回は一人で回ろうとする藤田だったが、乙川は祇園祭にはいろいろとルールがあるから慣れない人間には危険だと言い、荒唐無稽な話をする。しかし、藤田は実際に目を疑うような祭りの裏側に巻き込まれていく。
本物偽物問わず京都っぽい日本っぽいものの描写にあふれていてごちゃごちゃしている。深緑野分の『この本を盗むものは』が似ている。わけのわからない目まぐるしさ。

「宵山劇場」
一方そのころ乙川は。

「宵山回廊」
千鶴の叔父は画家をやっていて、彼の娘は宵山の祭りで行方不明になってしまっていた。叔父は宵山で娘の姿を見たといい、その姿を追ううち、宵山の日を繰り返すようになってしまったと話す。

「宵山迷宮」
千鶴の叔父がお世話になっている画廊の柳もまた、宵山の日を繰り返していた。乙川という男が探している柳の父の遺品が関係しているらしいが……。

「宵山万華鏡」
「宵山姉妹」で妹がはぐれているとき、姉は何をしていたか。これまでの短編に登場した人物によく似た人物が登場するがどうやら様子が違うようだ。

いつも通り京都を舞台にしていて、今回は宵山に関連していることも共通している。
しかし、すべてが続編というほどの繋がりはないし、物語の雰囲気も大きく違う。
お祭りというものは華やかである一方、少し目を脇にやれば暗い不気味な一面も見せるものだ。
本作は複数の短編を通して宵山の世界観を表現しており、各短編が一つの作品であると同時に、短編集としても一つの作品を形成している。

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