本年度ミステリ・ランキングの大本命! この面白さ、《決して疑ってはいけない》……。「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」。突然の依頼に、かつての凄惨な体験が作家の脳裏に浮かぶ。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。作家は、事件を小説にすることで解決を目論むが――。驚愕の展開とどんでん返しの波状攻撃、そして導かれる最恐の真実。読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!
小説新潮に掲載された短編5作と、それら一連の出来事についてまとめた書下ろし1作。リアルタイムなルポのように書かれており、1作目を書いたことで2作目の話が持ち込まれ……という形で話が続いていく。雑誌掲載は1作目「染み」が2016年8月、2作目「お祓いを頼む女」が2017年2月というように実際に掲載期間が空いており、本当にその間に取材が進んでいったかのように思わせる。また、1作目に関連した赤い染みが本作の裏表紙についていたりと作り方が面白い作品だ。
私はホラー小説はあまり読まないが、ネット上の怖い話は昔よく読んでいた。それらは心霊現象が起こるとすぐに霊能力者が出てきたり、「お前あれを見たのか!」みたいな展開だったり、いろいろとお決まりの共通項があり、本作にもあてはまるものがいくつかあった。しかし、恐怖を感じるうえで重要なのは「どれだけ身近に感じられるか」であって、怖い作品にはそれが共通している。本作のルポ形式は本当に現実で起こっていそうな気がして恐怖心をあおるいい試みだった。
現実に即して書かれているから、超常現象が起きたときにまずは現実的な解釈から話を進めようとするのも自然でいい。一つの怪奇現象と思われたものを、人為的なものとそれでは説明がいかないものに分けて紐解いていく様は、ホラーでありながらミステリのような面白さがあった。
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