渡辺優『アヤとあや』

読書

誰かの“特別”でありたいすべての人へ
画家である父のモデルをしている、小学5年生の亜耶は、常に自らの美意識と神秘性に特別なものを感じていた。そんな彼女は相棒の彩といつも行動を共にしていた。歳を重ねるにつれ、次第に自分に宿る神秘性が損なわれていっていると焦りを感じるようになる亜耶。11歳の誕生日を迎えた当日、その感覚はより一層強くなっていく。学校に大勢いるただの凡人になり下がりたくないと、彩と共に「特別な」何かをしようと決意。いつもと少し違う日常を模索する。亜耶たちの前に、「学校にナイフを持ってきた」と騒ぐ男子が。そこに着想を得た相棒の彩が、「ナイフがほしい」と言い始め……。
渡辺優だからこそ描ける少女の心の深い闇。大人と子供の狭間で複雑に揺れる十代のリアルを鋭く紡ぎ出す!

自分が特別であるという意識は、子供のころ誰もが持っていたんじゃないだろうか。
しかし、成長につれて自分は大勢の中の一人にすぎないということに気づかされ、それを受け入れなければならないようになる。

小学五年生の亜耶は年を経るにつれて自らの神秘性が失われていっていると感じている。
彼女は神秘的でありたいと願うが、そう願ってしまっている時点で神秘的ではないということにも気づいてしまっている。
そのことにどう折り合いをつけていくのか。

序盤の亜耶からは傲慢さを感じるが、それがラストでは自己愛のように変わっていくのがよかった。

以前読んだ『自由なサメと人間たちの夢』同様、少しメンヘラっぽい小説だが、著者はそういう人間のちょっと暗い内面を描くのがとても上手だ。

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