内容に触れずに感想を書くのが難しいので今回はネタバレありで。
あらすじでどんでん返しを匂わせるのはやめてくれ!
しかし、本作は読者を騙すことに全力集中でネタバレして終わり!ということはなかったので良かった。
謎が明らかになった後も、それまでの幻想的な雰囲気を引き継いで物語が続く。
謎も単純な一つではないのもよかった。
舞台が単なるファンタジー世界ではないことには気づいたが、まさか自己認識まで偽られているとは。
美しいものへのあこがれを植え付けられてしまったあとで現実の醜さを知ったら、もう一度戻ろうと自分の目をつぶして父の元に戻るくらいのことをするかと思ったが、ある意味それ以上にグロテスクな結末だった。
結局父から離れられない怜、そして過去をうやむやにしたまま怜を弄ぼうとしている父。
はっきりとさせないことで、善悪の議論を挟みにくくなっているのが怖い。
父が完全に仕組んでいて、怜は被害者だとはっきりすれば単純で分かりやすい話なのだが。
形が変わっただけで、怜が父の支配下にあることは変わらない。
なのに、またあの美しい日々が始まると読者にまで何か期待させてしまうような状況になっていて恐ろしい。
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