三浦しをん『愛なき世界』

読書

恋のライバルが人間だとは限らない!
洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――
本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。

 洋食屋で働く青年藤丸は出前で訪れた大学で、植物を研究する大学院生の本村に恋をし、告白する。しかし、植物という愛のない世界に身を置いているから想いに応えることはできないと断られてしまう。男女逆転版『舟を編む』のような物語世界で、藤丸の恋と本村の植物研究を追う。

 文系の私にとって、理系の研究内容、とくに大学院での専門的な研究が興味深かった。植物学と農学はどう違うのか、研究室ではどういうことをしているのか、植物の成り立ちを調べるためにどうアプローチするのか。
 本村が研究に熱中する姿はかっこよかったし、それを見て想いを抱えながらも彼女の邪魔にならないように努める藤丸の姿も好印象だ。
 ただ、後半が少し急ぎ足になっていて、少し薄っぺらく物足りなかった。ラストには納得がいったが、長いこと描写してきた割には盛り上がりに欠けてあっけなく感じてしまった。
 

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