豊崎由美のあとがきに共感する。
山本弘は物語で世界を変えようとしている。
『アイの物語』は強いメッセージのこもった本だ。
あらすじの通り、アイビスが読み聞かせるのは6つの物語。
「宇宙をぼくの手の上に」
「ときめきの仮想空間」
「ミラーガール」
「ブラックホール・ダイバー」
「正義が正義である世界」
「詩音が来た日」
「アイの物語」
こうして並ぶからこそ多少の差は出るが、すべて☆5でいい作品たちだ。
書き下ろしは最後の2作品だけだが、その他は初出の時期がバラバラで、それを一冊にまとめてひとつの物語を紡ぐという構成力がすごい。
一つ一つの物語を見ても、構成の上手さが光る。
SFなので都合の良い設定を生み出しやすいとはいえ、それをどう使うかは力量次第。
この作品では設定されたものは使いつくされる。
情報に無駄がない。
構成をいじって、山本弘がよりうまく伝えようとしたものは何か?
それは「i」だよ「i」。
人間というものは、とにかく自分のものさしではかろうとする生き物だと考えさせられる。
作中にある通り、「フィクションは『しょせんフィクション』ではない」。
現実の言葉だろうがフィクションの中の言葉だろうが、その言葉自体の重みは変わらない。
それどころか、物語の方が現実より正しいことは往々にしてある。
『アイの物語』には真実が書かれている。
たくさんの人に読んで欲しい。
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