住野よるさんは新人だそうだが、次作が出たら絶対に買う。
この作品の文庫が出たらまた買ってもいい。
仲良く暮らしていた恋人たちに不幸が訪れて、最愛の人が病気になり死んでしまうというのは、よくある話だ。
現実でよくあったらたまらないけど、小説の中では定番といってもいい。
この作品も系統としては同じなのか、主人公と出会った女の子、桜良は死んでしまう。
それも、1行目で彼女が死んでしまうことがわかる。
物語は始まりからすでに桜良の死に向かって進んでいる。
それなのに、彼女はほとんど弱さを見せない。
絶対死ぬはずなのに、死を感じさせないキャラクター。
読み進めていくと怖くなる。
いつ死ぬのかわからないからだ。
王道的展開ならば、逆説的に、病気が発覚するまではヒロインは死なない。
弱っていく姿を見せるまでは、死なない。
桜良の場合は、リミットの分からない時限爆弾みたいなもので、いつ死んでもおかしくない怖さがある。
加えて、桜良が死んでしまいそうなフラグを次々に立てていくものだから、ページをめくるのが恐ろしくなってくる。
桜良の前向きさを際立たせる文章は、とてもよかった。
ユーモアを交えた言葉遣いは受け付けない人もいると思うが、私は例えば伊坂幸太郎のものよりも好みだ。
読みやすいし、全体的に一文一文の質が高いと思う。
中でも気に入った文がある。
「私達は、皆、自分で選んでここに来たの。」
何事も選択の積み重ねだと本当に思う。
運命も奇跡もない。
この本の帯には大層なことが書かれていて、誇大広告だと感じた人もいるみたいだが、私は真っ当な評価だと感じた。
終盤は涙が止まらなかったし、読み終えたあとは人との関わり方を考えさせられた。
タイトルの意味もとても素敵だった。
「君の膵臓をたべたい」
カニバリズムではない。
だとしたら、「どうせ、膵臓を食べたいくらい好きだとか、そんなところだろう」と思う人が多いはず。
私もそうだった。
でもそれも違う。
気になる方はぜひ一読を。
コメント