中田永一というのは乙一の別名義だそう。
本書の中では乙一について触れていないので書こうかどうか迷ったが、中田永一の作品を気に入った人であればいずれ知ることになるので書いてしまった。
「百瀬、こっちを向いて。」
「なみうちぎわ」
「キャベツ畑に彼の声」
「小梅が通る」
の4つの短編が収録されている。
「小梅が通る」は書き下ろしで、他はアンソロジー本に収録されたことがある作品だ。
一番良かったのは、何と言っても表題作の「百瀬、こっちを向いて。」だ。
会社に行くまでの間に読んでいたのだが、結末まで読みたくて遅刻ギリギリまで駅で読んでしまった。
なんともどきどきする文章を書く。
ラストの1ページ、そしてたった一言で、こんなにも切ない気持ちにさせることができるのか。
ちなみに映画化もされているが、こちらは結末が異なっていて、私は受け入れることができなかった。
ただ、この作品に登場する田辺くんを描いた番外編がJTのホームページで公開されているそうだ。
そちらを楽しみに読もうと思う。
4つの作品に共通するのは、「好きになる瞬間」だ。
ホラーから切ない物語まで幅広いジャンルを得意とする乙一だが、本書ではすっきりとした爽やかさが際立っている。
中田永一がこういう方向性でいくならば、乙一名義よりも好きかもしれない。
コメント