土屋 賢二『もしもソクラテスに口説かれたら ツチヤ教授の哲学ゼミ』

読書

「わたしはあなたの顔も性格も嫌いですが、あなた自身を愛しています」と言われたら、どう思うだろうか。

ソクラテスはこんな論を展開した。
「人間が道具を使う時を考えればわかるように、使われる物と使う主体は別々のものである」
「人間は身体を使う。だから、人間と身体は別々のものである」
「身体を使うのは魂であるともいえる。だから、人間と魂は同じものである」
「したがって、人を真に愛するということは、魂を愛するということである」
「他の男はあなたの身体に恋しているが、それはあなたの所有物に恋しているに過ぎない」
「私はあなたの魂を愛している」
「だから、あなたを愛しているのは私だけだ」

この論理はおかしいだろうか?それはまたなぜか?ということを考えていくのがこの本の内容だ。

お茶の水女子大学の哲学の教授である土屋さんのことは、以前エッセイを読んだときに知った。
またふざけた話をするのかと思えば、ちゃんと哲学している……。

この論理がどうおかしいのかということを追求していくのは難しいため、最終的な結論は明示されない。
しかし、哲学がどういうものなのかとか、普段当たり前に考えていることに疑問の目を向けさせる良書である。
163ページと短く、専門をまだ学んでいない大学1年生向けの話で、いつもの土屋節もあるために読みやすい。

土屋教授「僕が眠っている間にブラッド・ピットと脳を入れ替えられたとする。朝起きた時、ブラッド・ピットの脳を入れられた僕は何というと思う?」
学生「「あれ、ヘンな東洋人になっちゃった」だと思います」
土屋教授「違います!「急にハンサムな東洋人の顔になった。うれしい」と英語で考えるんだよ」


コメント

タイトルとURLをコピーしました